筒に米糊を入れ、先端の筒金から少しずつ押し 出して文様を描くように糊置きして防染する、 染めの技法のひとつです。婚礼道具としての布団や風呂敷など、
大画面のものに用いられることが多く、豪商、豪農といわれる家 から紺屋に特別に注文されて作られたものがほとんどで、量産はされて
いません。豊かな絵画表現が可能とあって、さまざまな芸術品ともいえる品々が今に残されています。 「年代・産地・形態」 明治、大正時代のものが大半です。
江戸時代の物は稀。他には広幅の布を使った昭和初期の作品も見られます。産地は四国、九州、山陰地方が主で中でも高知や九州ものは色彩も華やかなものが多い。
香川、愛媛、徳島、山陰、北陸、近畿などは、色彩の入ったものがありますが、総じて
藍の濃淡と白抜きの絵画文様の作品が中心です。それぞれに地方独特の技法、意匠がこらされております。形態としては布団表、風呂敷、油単(婚礼家具などを覆うもの)などがもっとも多く、その他幟や夜着、万祝(大漁の祝いの引き出物として舟主から舟子へ贈られた反物を着物に仕立てたもの)、背負い子帯、馬の腰掛けなどもの見かけます。面白いのは、上部に紅花染の入った赤ちゃんの湯あげや、足形を描いた足拭きなどがあります。 「柄行きのいろいろ」
よく見られるものは、次のようなものです。 鳥獣-松竹梅に鶴亀、桐に鳳凰、梅に鴛鴦、牡丹に唐獅子、竹に虎、波に兎など 魚介-松に鯉、鯉の滝登り、海老、貝尽くしなど
器物-貝桶、茶道具、扇など 吉祥図-熨斗、宝尽くし、宝船など草花-唐草、牡丹、花文尽くし、大根など
説話物-浦島太郎や高砂、菊慈童などその他-発注主の家紋など、そして数は少ないのですが 麒麟や獏、象、獅子など、当時の染職人にとってまだ見ぬ動物を想像力を駆使して
描いたものは、本物より神秘的、あるいは漫画的で、とても面白いと思います。
筒描の魅力は、藍だけで派手な色彩のない心休まるもの、 色彩は入っていても長い
歳月を経て寂びて落ち着いて風合いのもの、未使用で一度も水を潜らず 作られた時のままの
艶やかな色彩が見る人の血を騒がせずにはおかない物など、好みはさまざまだと思います。共通していえることは、時代は江戸時代であれ大正であれ、本物であり、芸術性が高く、絵画として
鑑賞できます。
|